住宅型有料老人ホームとサ高住の経営を比較|最低居室面積と居室単価から考える収益モデル

住宅型有料老人ホームとサ高住、経営で本当に重要なのは「居室面積」なのか?

住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の開業・経営を検討する際、多くの経営者が気になるのが「最低居室面積」です。

実際、

  • 住宅型有料老人ホームは13㎡
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は原則25㎡(条件により18㎡以上)

という基準を目にすることが多く、「面積が広い方が良い施設なのでは」と考える方も少なくありません。

しかし、30年以上介護事業を経営してきた経験からお伝えしたいのは、経営で重要なのは居室面積そのものではなく、「居室単価」と「収益構造」をどう設計するかという点です。


住宅型有料老人ホームとサ高住の最低居室面積

まずは一般的な基準を整理します。

項目住宅型有料老人ホームサービス付き高齢者向け住宅
最低居室面積原則13㎡原則25㎡
共用設備条件指導指針による共用設備が充実している場合は18㎡以上も可
建物の特徴施設型高齢者向け賃貸住宅型

※自治体や制度、既存建物の改修などにより取扱いが異なる場合があります。

この違いだけを見ると、「住宅型有料老人ホームの方が小さな建物で効率的な経営ができる」と考えがちです。

しかし、実際にはもう少し複雑です。


居室面積より重要なのは「居室単価」

介護施設経営では、

1部屋からどれだけ価値を生み出せるか

が重要です。

例えば、

13㎡だから利益が出る。

25㎡だから利益が出ない。

そんな単純な話ではありません。

重要なのは、

  • 家賃収入
  • 訪問介護
  • 訪問看護
  • 障害福祉サービス
  • 加算
  • 医療との連携

これらを組み合わせて、一室あたりの売上をどこまで高められるかです。

つまり、

「部屋の広さ」ではなく「部屋の価値」が経営を左右する

ということです。


居室単価という考え方

私たちが施設経営で重視している指標が、

居室単価

です。

例えば一室あたり

  • 家賃
  • 食費
  • 管理費

だけを見るのではありません。

その利用者へ提供される

  • 訪問介護
  • 訪問看護
  • 医療
  • 障害福祉

まで含めて、一室全体の価値を考えます。

結果として、

一室あたり約60万円規模

を一つの目標として設計しています。

この考え方になると、

13㎡なのか25㎡なのかより、

その部屋がどれだけ地域へ価値を提供できるか

が重要になります。


13㎡でも9㎡でも、考えるべきことは同じ

住宅型有料老人ホームでは一般的に13㎡が基準として扱われています。

一方で、自治体との協議や既存建物の活用などにより、9㎡程度で整備された事例も存在します。ただし、これは一般的な基準ではなく、個別事情や当時の制度・指導内容によるものであり、すべての計画に適用できるものではありません。

ここで重要なのは、

9㎡だから利益が出る。

13㎡だから利益が出ない。

という話ではありません。

むしろ、

  • 建築コスト
  • 土地価格
  • 固定費
  • 建築効率

まで含めた全体設計が重要になります。


面積が大きいほど建築コストも上がる

例えば、

19床の施設を考えてみます。

13㎡なら、

居室だけでも約247㎡になります。

25㎡なら、

約475㎡です。

これに共用部を加えると、建築面積の差はさらに大きくなります。

つまり、

居室が広くなるほど、

  • 建築費
  • 固定資産税
  • 修繕費
  • 空調費

なども増加します。

経営では、

面積=コスト

でもあるのです。


建築費を抑えることが利用者負担を抑える

介護施設経営では、

建築費は一度払えば終わりではありません。

その後30年以上にわたり、

利用者負担へ影響します。

建築費が高ければ、

固定費が高くなります。

固定費が高くなれば、

家賃も上げなければなりません。

その結果、

利用者負担が増えてしまいます。

だからこそ、

最初の設計段階で

必要以上の建築コストを掛けない

という考え方が重要になります。


介護施設経営は「部屋」ではなく「仕組み」を経営する

私は、

介護施設経営とは建物を経営することではないと考えています。

本当に経営しているのは、

利用者の生活を支える仕組みです。

住宅型有料老人ホーム。

訪問介護。

訪問看護。

医療。

ケアマネジャー。

地域連携。

これらが一体となって初めて、

一室の価値が生まれます。

つまり、

居室単価とは、建物の価値ではなく、地域へ提供するサービス全体の価値なのです。


これからの住宅型有料老人ホーム経営に必要な視点

今後は、

建築費の高騰。

人件費の上昇。

物価上昇。

人材不足。

これらが続くことが予想されます。

だからこそ、

「広い施設をつくる」

ではなく、

「利益を生み出し続けられる施設を設計する」

という考え方が必要になります。

住宅型有料老人ホームも、サ高住も、重要なのは制度の違いだけではありません。

  • 建築コスト
  • 居室単価
  • 地域ニーズ
  • 医療との連携
  • 訪問看護
  • 訪問介護
  • 人材確保

これらを総合的に設計して初めて、持続可能な経営が実現します。


まとめ|居室面積より「居室価値」を設計する時代へ

住宅型有料老人ホームの最低居室面積は原則13㎡、サ高住は原則25㎡(条件により18㎡以上)という基準があります。

しかし、経営という視点で見ると、本当に重要なのは面積ではありません。

一室からどれだけ地域へ価値を提供できるか。

その結果として、どれだけ適正な収益を生み出せるか。

これからの介護施設経営では、

「居室面積」ではなく「居室価値」と「居室単価」を設計すること。

これこそが、長く地域に必要とされる住宅型有料老人ホーム・サ高住経営につながる考え方ではないでしょうか。